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住宅ジャーナル2007年4月号
     透湿ルーフィングの普及進むドイツ・イギリス

     通気・断熱性能で見る欧州屋根事情
                                 
                      
透湿ルーフィング協会

 屋根の漏水や結露対策として注目されている透湿ルーフィング。従来型のアスファルトルーフィングの防水層に比べ外部への湿気の放散ができるので、下地材の乾燥促進と腐朽防止効果が高い。2001年頃の発売から5年を経て日本での普及率はルーフィング市場全体の約2%に及ぶが、EU諸国に比べるといまだに遅れている。そこで更なる普及のため透湿ルーフィング協会(東京港区セーレン本社内・松村重信会長)では、欧州屋根事情を紹介するセミナーを開催した。


欧州とドイツのルーフィング事情

 セミナーでは、まず始めに顧問の土屋喬雄・東洋大学工学部建築学科教授より透湿ルーフィングの機能と役割について一時間余りにわたり講演。環境実験室における試験結果や、夏型結露・冬型結露の可能性についてシミュレーション結果を踏まえて説明された。続いてドイツ・イギリスでの普及の事例について会員の各代表から紹介された。

 欧州の事例として、ラファージュルーフィング鰍lR商品開発営業の寺田亮課長が「欧州の屋根事情〜なぜドイツでは透湿ルーフィングに切り替わったか〜」と題して講演。欧州の一般的な屋根構造としてコールドルーフ(断熱材なし)とウォームルーフ(断熱材あり)に大別される。


             コールドルーフは地中海諸国やスコットランド・北アイルランドに分布。
             ウォームルーフはドイツ・フランス・オーストリア・北欧諸国等に分布。

2005年市場の比率は、コールドルーフ45%に対し、ウォームルーフが55%。5年後の2010年には断熱材入りのウォームルーフが5%ほど上昇する見通しだという。欧米の透湿ルーフィング市場は1億1000万uで(約90万棟)で、推定屋根面積5億7300万uの19%にも及んでいる。

こうした普及をリードしているのがドイツの屋根である。ドイツはウォームルーフ圏に属するが、野地板なしが86%にも達し、野地板ありの北欧諸国と異なる。また断熱は屋根裏利用が多いために屋根断熱が中心である。

 ドイツでの透湿ルーフィングの普及は1990年代から始まった。それまで下葺材にはアスファルト系、合成樹脂系のルーフィングが中心であったが、現在、透湿ルーフィングの普及率はほぼ100%に達している。

こうした背景には、屋根の葺き替えを定期的に行ってきたドイツのリフォーム事情がある。ドイツでの建物寿命は50年〜100年。住宅・街並みを資産として考えるために、屋根の葺き替えのリフォームを中心としたメンテナンスが主流である。

 ドイツでは自治体・大学などの研究機関、メーカーが一体となって調査を行い、屋根下地(内側)の結露や、断熱材と垂木へのカビ発生の実態を報告すると、自治体も条例等で規制化。野地なしの透湿ルーフィングの普及に拍車がかかった。さらにドイツ屋根工業組合(ZVDH)も条例に準じて独自に詳細を規定した。


                ドイツでの一般的な屋根構造

 現在ドイツでは屋根材への厳しい規格(DIN 4108-3)がある。屋根断熱構造の基準として水蒸気拡散による結露の被害を避けることが盛り込まれているほか、垂木間・断熱材間の通気面積などが規定されており、屋根工業組合も規格に基づき、縦桟の厚みの規定も行っている。(表2参照)


(表3)屋根材の規格DIN4108-3

@屋根断熱構造の基準 水蒸気拡散による結露の被害を避けること
A必要最低限の通気面積の規定

A−1 軒先・棟・屋根+垂木長さ毎に通気面積を規定

A−2(低勾配の場合)
.軒下通気面積は最低軒先がある部分の屋根面積の0・2%とし、
  垂木長さが10m以下 の場合は200cu。

.棟部の開口面積は最低総屋根面積の0・05%。
.断熱層の通気面積は、通気する線上に対して垂直方向に最低200cu。

.通気層空間は20mm以上。

B下葺き材の透湿度の規定 ※屋根工業組合も上記を推奨し、下葺き材の透湿性能や瓦の形状によっては縦桟の厚みを24mm以上と規定。

 日本では充填式内断熱の結露の問題が発覚して以来、外断熱工法の普及が中高級住宅向けに進んでいる。充填式断熱のメーカーでも屋根に関しては結露の問題のない「桁下断熱」などをオープン工法として推奨している。ドイツでの断熱工法は、透湿ルーフィングの性能を十分に生かした野地なしの屋根下断熱である。(表3) こうした工法は外断熱と比べてコストパフォーマンスに優れている点は確かであるが、ドイツでの普及の背景には、均質のとれた街並みづくりのために、各自治体と屋根職人(マイスター)が一体となったメンテナンスを行っていることも留意すべきであろう。

省エネ化と共に普及進むイギリス

 次にA・プロクター・グループ・リミテッドのアンドリュー・ラッセル日本支店長から「イギリスの屋根におけるエネルギー効率と傾向」と題して講演。

 一般にイギリスの住宅はレンガ作りで知られている。レンガの外壁とブロック内壁を組み合わせたブリック&ブロック(brick&block)や、内外共にブロックのblock&blockが基本形である。近年では2×4工法が成長分野となり、スコットランド及びロンドンの新築の60%以上を占めている。

 世界的な温暖化の中でイギリスでも低エネルギー規制をどう定めるかを課台としており、全国的な二酸化炭素排出量の中で27%を占める住宅の温暖化ガスの対策は重要な役割を占めている。2007年6月にはエネルギー効率認定書(Energy Label)を導入。さらに2050年までの二酸化炭素排出量60%削減を目指して、ゼロエネ住宅(ZEB)を2016年以降の新築全てに普及させようとしている。

こうした中で透湿ルーフィングも年々成長している。90年代初めにA・プロクター・グループとデュポン社によって導入された透湿ルーフィングはドイツと比べると穏やかな成長を続けているが、07年には99年比の6倍以上の販売が見込まれている。成長の理由には99年に「非通気のコールドルーフ(天井断熱)工法」が認定されたことがある。これは結露問題は通気では完全に解決できないことから、結露リスクを低下させるために透質ルーフィングが普及した。屋根工法では最も低いコストで施工できる。また透湿ルーフィングを使用したウォームルーフ(非通気の屋根断熱)の適用が増え、ウォームルーフ工法の市場占有率における成長も背景にある。

 また日本における野地板についてもユーモアを交えて言及。
「イギリスでは安全のためにネットや緩衝装置やハーネスをつけます。日本の大工さんは何もつけずに梁の上を歩くのに驚きます。日本では安全のために野地板は必要でしょうか?」
 ラッセル支店長によれば、日本における野地板の役割は、@ブレーシング(筋交い)性能、A安全性、B屋根材を固定するための下地材だと見る。しかし、イギリスやヨーロッパ諸国で野地板は屋根材を固定するための下地材の役割のみだという。そこで野地板なしでもブレーシング工法によって筋交いの役割は果たせるとして、トラス屋根協会(Trussed Rafter Association)の資料をもとにイギリスにおける屋根のブレーシング工法やブレーシング基準を紹介。日本では伝統的な野地板が消えることはないだろうと予測しながらも、野地板なしの工法を提案した。

ブレーシング工法はこちらを参照(トラス垂木協会 HP)

今後は断熱材メーカーとも協力

 現在、日本の推定屋根面積1億2000万uのうち、透湿ルーフィングの面積は200万u(約2%)とまだ普及が進んでいないのが現状である。本セミナーでは今後、透湿ルーフィングの普及促進と共に断熱材メーカーの協力も得ながら屋根構造の改良に勤めていく方針である。

透湿ルーフィング協会(セーレン本社内)
  03‐5411‐3401  

透湿ルーフィング協会  設立2004年。正会員は旭デュポン、セーレン、東レコーテックス、フクビ化学工業などの国内生産メーカーの他、A・プロクター・グループ、ナガイ、ラファージュ・ルーフィングなどの輸入メーカーの全7社。準会員は旭化成建材・日精・日東電工マテックスの3社。

 ラファージュ社  本部フランス。世界75カ国で年間売上げは135ユーロ(2兆円強)セメント世界第一位。コンクリートと骨材世界第2位。石膏ボード世界第6位。屋根材は世界第一位。屋根材本部はドイツで世界46カ国に屋根材を展開。世界の屋根を知り尽くしたノウハウが活かされている。ラファージュルーフィング(旧・日本モニエル)は2006年から販売を開始。
 A・プロクターグループ・リミテッド 創業18世紀。資本金5億円。建築関連の研究開発と販売をメインに創業しており、海外拠点は欧州諸国、北米など世界各地で展開。2005年に日本支店を開設。



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