住宅ジャ−ナル2006年9月号

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パネル機械特集 動き出す面材プレカット

  新開発のプレカット加工機・進展する住宅のパネル化  変わる現場の生産性



宮川工機 合板加工機/MPD-11

ナカジマ NCボードトリミングマシン

日高機械/田辺鉄工所  合板加工機

飯田工業 パネル加工機/PTC−1230NC

丸仲鐡工所 登り梁加工機NBC-1340 全自動打ち込み機DPT-15N

平安コーポレーション スーパーマルチロボットFZー30

ハセベ 地域ビルダーからみる面材完全プレカット化への流れ


面材プレカットの増加
 現在、その中でいま普及率が80%を超えた構造材プレカットに次いでユーザー工務店・ビルダーから求められてきているのが、構造用合板など現場施工での各種面材の利用拡大と、その面材のプレカット化面材PCである。すでに剛床工法では、24皿などの厚合板を手加工するのは大変な労力であり現場施工が非常に楽になることから面材PCの普及が大きく進んでいる。また最近では構造性能等の向上のため、壁面でも構造面材の採用が増えてきており、こちらも施工性、施工品施工信頼性という観点から、現場での加工を嫌い工場でのPC化を志向している。また雑壁等も構造計算に組み入れられるようになるなど、CADと連動した構造計算システムの採用などで、、ますます面材プレカットが優位に動き出している。
 実際にプレカット工場での話によれば、現在.ユーザー工務店・ビルダーでの床合板のプレカットを採用している数は構造材プレカットユーザーのざっと半数程度、屋根野地合板のプレカットを採用しているのは2〜3割程度だという。現場では構造性能という観点だけでなく、技能を持った大工不足への対策、現場作業者の作業軽減という意味でも、今後この需要は益々高くなろうとしている。またユーザー側である工務店・ビルダーでもこうした動きに呼応して、住宅品質・信頼性の向上、現場生産効率のアップ、そして現場で発生する廃材の減量化、切削に伴う騒音抑制など現場環境の改善のために動き始めている。

需要拡大の背景
 こうした面材プレカットの需要拡大を支えているのは、現場施工での基礎や構造材プレカット精度が向上し、現場採寸なしで面材をプレカットできる条件が整ってきたからだ。特に基礎精度については、最近特に厳密になつてきており大手ハウスメーカーをはじめ中堅ビルダーでも誤差2皿以内という精度まで向上している。利用を妨げていたコスト面でも、苦渋作業の軽減というだけでなく、現場で発生する端材、廃材処理費の高騰のため受け入れられるものとなつてきた。またプレカット工場側も需要の拡大で利益の取れる分野となつてきており、プレカット工場の新たな加工分野としても積極的な取り組みをみせ、ユーザーの工務店・ビルダ−などでの利用を促す展開をはじめている。

面材FCの新たな主役
 現在のところ、面材PCのメインは合板のプレカットであり、最新のテクノロジーを駆使した高効率・高精度の加工機終によるパネル加工が行われている。宮川工機の合板加工機「MPP−11」 受注増加、飯田工業のパネル加工機「PTC−1230NC」によるCAD/CAMパネルカットシステムへの対応など進展が日ざましい。早くから期待されているサイディングのプレカットはまだ少ないが、最近では前述した通り躯体精度が向上したお陰で、図面通りのプレカットを現場に持ち込んでもピタリ取付けられるようになり潟nセベのように成功した事例もある。ナカジマの外装兼用のサイディングのプレカット機「NPT3000」 による加工もその一例だ。
 また、最近の木造住宅に使われるその他の主要な面材を上げると、石膏ボード、フローリング、各種断熱ボード、今話題のダイライトやモイスなどの高耐力面材などもあり、こちらのプレカット化も期待されている。石膏ボードなどは切削が簡単であり材料コストも高くないので現場でカットしても良いが、石膏ボードは管理型廃棄物となっており、現場で分別してごみに出さなければならないので工場プレカットが適するようになっている。また40坪程度の住宅だと7〜8人工程度はかかる作業で、その6割以上が採寸と切削にとられている。その意味でも現場施工が半分以下になると思われる。断熱ボードなども、今後の化学製品の高騰などで一層高価な材料となる。CADによる合理的な割付、工場での歩留まりの高い板取などでプレカット材の方が有利になってくる。また高耐力面材は優れた特性をもっているが、比重が0・6から1以上と重い材料であり、現場の切削作業は大変である。今後の大工不足の対応、施工品質の向上という意味ではこちらも工場でのプレカット向きだ。

取り組むべき課題
 しかし、面材プレカットは、それぞれの素材が一様ではない。しかもその面材を取付ける構造躯体の木材も性質が均一でない。木材そのものも温度によって伸縮している。木材は10mで4〜8皿伸縮するという。安定的な集成材でも長くなれば伸縮が目に付くという。これに対して各種の面材もそれぞれの特性に従って伸縮する。特にサイディングが伸縮することは良く知られている。
 あるプレカット機械メーカーの話では、木材とそれぞれの面材の伸縮の誤差を把握しプレカットする必要があると指摘する。ただ精度がいい躯体であれば面材PCを使えるのではなく、プレカット工場での生産工程の仕組みや管理も大切だというわけだ。
 またプレカットされた面材は、開口部形状に合わせて複雑な形状にカットされることもあり、その積み込み、運搬、荷卸、ジャストインタイム納材の工程管理などにもノウハウが必要だ。現場の施工の仕組みも変える必要がある。つまり面材PCへの取り組みは、プレカット工場、工務店・ビルダー、現場施工をトータルに再構築する新しい材料供給・施工システムといってもいいのである。プレカットというのは現場での加工代を工場にシフトしてきたわけであり、いま始まったPC面材についても加工代はプレカット工場に移るようになるので、大きな現場作業システムとそのコストの変革が必要となる。逆にそこまでしなければPC面材を使う本当のメリットが生かされないようだ。

プレカット機の展望
 面材PCの要は何と言っても、各種の面材を加工するプレカット機械である。その性能、精度、能力、他のプレカットシステムとの連動など様様な点から、面材のプレカット機械の重要性は益々増してくると思われる。次の項では日本を代表する自動プレカット機械メーカーが、今力を入れている合板.プレカット機の状況を紹介する。
 そして後半では、最先端のサイディングプレカットの一例を潟nセベを通して紹介する。






プレカット加工機の納入実績500台目前
                         宮川工機 〔合板加工機/M2D−11〕


   
合板加工機 MPD-11 
                                                        
 全自動ブルカット機械メーカーの宮川工機(愛知県豊橋市、宮川嘉朗社長) は、木造在来軸観工法による構造材加工において機械プレカットの先陣として取り組み、住宅・工務店におけるプレカット材の普及率を80%に向上。同社構造用プレカット加工機の納入実頼も500台(ライン) に達している。
 構造材加工機MPS−V8Wをはじめ、金物工法対応構造材加工機MPS−V8W、金物工法用加工機MPE−11/21、羽柄材加工機MPC−13など、あらゆる部材に対応し、ニーズに合わせた自由な組み合わせが可能。ユーザー独自のプレカットシステムの構築ができるフルラインナップを誇る。また、これを支援する宮川プレカットCADシステム (MP−CAD2000) により大きく進化し、コスト競争力、高品質の加工精度を掟供している。また、多関節ロボットの採用で従来のプレカット加工ではできない複雑な仕口加工を実現。高精度・高能率の多彩な加工形状を手加工なしでできる多種加工機MPS−54も登場。生産性の向上に役立っている。
 品確法の施行以降、構造性能競争が激化、住宅構造の安定化や壁倍率・床倍率での合板張り工法が大幅に採り入れられた。また耐震用金物工法の増加に伴い、次世代への木造住宅の耐久性・耐震性を引き出す床・壁・屋根などの合板、パネル加工を施す構造用面材による高品質化が進んだ。いち早く開発を手掛けた合板加工機「MPD−11」は全国のプレカット工場に70台強を出荷。今年は更に月2台の受注ベースにより、その普及が急速に進みつつある状況に変化している。順調に推移すれば、年間24台以上の販売を見込み、住宅の合板加工機によるパネル化はより進展する勢いをみせている。 

宮川工機 TEL(0532)31−1251
 


サイディングのプレカットにも対応

                           ナカジマ 〔NCボードトリミングマシン〕

        プレカットシステム FAシリーズ

 全自動プレカット機械メーカーとして定評のある潟iカジマ (中島稔社長) では、最新のテクノロジーを駆使し、木の特性を活かした複雑な軸組工法をプレカット加工という形で可能にした。また、「よりシンプルに木の魅力を引き出す」ことを基本的な開発コンセプトとして掲げ、プレカット加工の生産技術について、最近の複雑化する加工内容について無駄なく簡単に加工ができる機構やシステムを追求。同社のプレカット機械設備は高能率な生産システムとして全国のユーザーから支持を得ている。
 同社の面材プレカットシステムの中心となっているのは、「NCボードトリミングマシン」シリーズで、NUP2000、NUP2000/3000、NBT3000の3タイプがある。NUP2000とNUP2000/3000タイプは、床合板の加工や屋根野地合板の加工向け。延床面積40坪程度の住宅であれば、1日で1棟分の加工ができる標準的な加工能力を持つ。
 外装サイディングのプレカット用としてはNBT3000が対応している。これは床合板・屋根野地合板の加工に加えて、サイディングのプレカットができる兼用機タイプ。同社の対応機械の特徴は、プレカット機械開発以前から窯業系建材の切削加工機械を製造してきた経験があり、サイディングのプレカットに付き物の防塵対策や石や砂の素材切削への蓄積を多く持っていることだという。サイディングなどの窯業系建材の加工機械は、木材加工機械と違い独自のノウハウを必要とする今後高精度が要求されるサイディングなどの面材プレカットにはこうした素材に合わせた技術がこれまで以上に必要になつてくるという。
 現在、同社製の合板プレカット機械は全国で50社に導入されている。サイディングが加工できる兼用機は5、6台入っているとのこと。同社によると、こうした面材を加工するプレカツト機械に対しては、月産2000坪超規模のプレカット工場の設備意欲が高く、需要も旺盛だという。同社ではこうしたプレカット業界の積極的な面材プレカットへの取り組みに応えて、現在の倍の能力のある1日2棟分の加工ができる高性能機の開発を進めている。

ナカジマ  TEL 0480−38−1211


大型機械プラントの製造部門をさらに強化

                     日高機械/田辺鉄工所 〔合板加工機〕

 
 特殊機械から産業機械まで手掛ける日高グループの日高機械&田辺鉄工所(石川県羽咋部賢町、日高明正社長)は、新し、い発想官設計・開発された在来工法・金具工法に対応のニュープレカットシステムなど数多くの最新ライン化を提供している。
 同社の各種加工機械には、自社独自の機械設備と制御技術、ソフト開発力が噛み合い、その加工技術と永年培った実兢、ノウハウによって高品質と新しい加工技術を持つ最新鋭専用機づくりで対応している。とくに金具工法・在来仕口併用型住宅プレカットシステムライン、大断面・中断面材プレカット機、ログハウスプレカット機、外壁サイディングパネルプレカット機など、新技術を巧みに駆使する。例えば国産材に付加価値を付け、継承すべき技術を活かした仕様が随所にみられ、総ての加工ユーザーの意見を尊重して、要望を適えるオリジナル機械となつている。ニュープレカットHシステム、ニュープレカット・構架材プレカットライン、マルチタイミング・横架材プレカットラインなど特殊加工が多いプレカット工場からの特注品仕様が主力である。
 最近は、国産スギやヒノキ材を有効活用した独自パネル工法「ボアズ」事業を木材業者の水鍬(三重県熊野市)と共同で立ち上げ、現在志賀町内に同社機械展示場を兼ねた木材加工の新工を設置させ、国産材活用の用途拡大に繋げる一大プロジェクトが進行している。また、日高機械の第2工場も年内に完成予定で、大型機械プラントの製造部門が更に強化される。
 同社の合板加工機は次世代に向けての木造住宅における高耐久性・耐震性を図る上で最も重要な構成要素である。屋根・床・壁合板からパネル用合板まで、剛性床、耐力壁・パネルの構造用面材と、幅広い加工を旋回鋸軸とルータ軸を装備したヘッド搭載により、全て1台で使いこなせることができる最新鋭の合板加工機は、数々の優れた特長を備えながら素人でも簡単に操作できる仕様で定評となつている。

日高機械/田辺鉄工所
TEト0767−3・2−3663


2面傾斜切断が可能
              
飯田工業 パネル加工機 /PTC−1230NC

  
PTC-1230NC

 木工機械メーカーの飯田工業(愛知県小牧市大字村中、井本希孝社長)は、パネルカットを極めた最強マシンを開発。木造住宅の金具工法の増加と、面材プレカットの進展から今後ますますパネル材加工の生産性が高まりつつある市場に向けて、「パネル加工機PTC−」230NC」の機種名で新登場させた。
 これによって、パネル切断作業への合理化を提案し、最先端技術を融合。パネル切断加CAD/CAMパネルカットシステムに対応。住宅の床材、壁材及び屋根材などの鋸による直線切断とルータによる輪郭切断、インクジェットによる印字を実現した。
 丸鋸加工では、直線切断、鋸軸の旋回による角度切断、軸を傾斜した角度傾斜切断、従来の機械で不可能とされた2面傾斜切断を可能にした。
 また、ルータ加工は、切り抜き加工、切り欠き加工、座ぐり加工と、インクジェットによる印字ができる。加工寸法が長さ1800〜3000mm、幅900〜1200mm、厚み9〜85mmにより、住宅の床・壁・屋根パネル加工の他、ドアパネル加工にも使用できるタイプとなつているため、プレカット工場以外、2×4住宅部材、住宅機器・フロア材・壁材、ドアパネル加工の製造メーカーでの生産向上、ライン工程の最適化に欠かせない新しい加工機械設備として普及を目指し、パネル加工機の販売強化を図る。

飯田工業
TEL 0568−75−5321 丸仲裁工所

プレカットをもっと便利に、高効率に

 
 
丸仲鐡工所 
 〔登り梁加工機NBC-134D 全自動打ち込み機 DPT-15N〕


   
DPT-15N              NBC-134D

 
住宅建築材加工の高度化に早くから取り組んできた滑ロ仲鐡工所(望月清史社長) は金物工法用プレカットラインのほか、パネル加工、羽柄材加工など関連する部材の加工用を含めて、多彩な加工設備をラインアップしている。代表的な機種としては、床パネル(構造用パネル) の専用加工機FPC−200W、金具接合工法用の登り梁加工機NBC−134D、金具用ドリフトピンの全自動打ち込み機DPT−15Nがある。いずれも木造住宅用プレカットラインの加工精度を高め、生産性を向上する独自の技術を盛り込み、もっと便利に、高能率なプレカット生産にするのが特徴。長年にわたってプレカット加工設備の開発を手がけてきた同社のノウハウが「カユいところに手が届く製品」として結晶化した。
 このうち、NBC−134Dは勾配、材幅、材高、金具の種類などの加工データをタッチ式パネルスイッチにあらかじめ登録しておくと加工パターンを呼び出すだけで金具工法の登り梁加工が簡単に行える。プロ職人の墨付け、手加工に頼っていた複雑な登り梁加工が、これ一台で正確に加工でき、隅木・谷木の加工も行えるので、作業効率も飛躍的に向上する。おもな仕様の一例は次の通り。
▽材幅=90〜135mm
▽材高=105〜390mm
▽屋根勾配=0・1〜10寸勾配
▽加工内容=登り梁の端部加工 (平行型、材高390mm加工可能)、水平梁の端部加工 (材高390mm加工可能)
▽機械の各軸構成=丸鋸軸(7・5kW)、カッター軸(7・5kW)、ドリル軸(2・5kW)、傾斜軸、(3・7kW)
▽機械寸法=幅2800×奥行き2200×高さ2700mm
 
 また、DPT−15Nは、ドリフトピンを全自動ライン上で自動打ち込みする設備。金物データにもとづき自動で作業を行うので、打ち忘れが発生せず、また、作業者の労働を軽減する。ピンは予備バケットも含め800本投入できる。

丸仲鐡工所
TEL  O54ー259ー8111

多様化する住宅生産を最新技術で支える


   平安コーポレーション 〔スーパーマルチロボットFZ−30〕


       FZ‐30

 都田システム研究所への全セクション集結を通して生産力を増強する兜ス安コーポレーション(静岡県浜於市、鈴木通友社長) は、柱材・横架材の主要構造材から羽柄材・パネル材まで木造住宅用構造材のプレカット生産をトータルにサポートする幅広い機械設備をラインアップ。多様化する木造住宅用加工設備のニーズに応える最新技術を提供している。その中でも居住空間や住宅工法の多様化に対応し、構造材の加工品質を高め、生産の高速化・高効率化を実現すると評価の高い代表機種が、スーパーマルチロボットFZ−30と横架材加工ラインAZFシリーズ。
 このうち、スーパーマルチロボットFZ−30は、古来の複雑な構造をもつ多角形建造物の木材加工を完全自動化することに成功した5軸制御切削システム。さまざまな形状の構造材でも高い精度と生産性を確保する。従来の横架材プレカットラインでは加工できなかった登り梁、斜め梁、合掌、ケラバ、追掛継手、台持継手など特殊形状の加工、また、金具工法材の加工にも容易に対応する (オプションで、下地材加工にも対応)。加工材料(横架材)は幅90〜15ノOm、高さ90450mm、長さ750〜6400mm。主軸のおもな仕様は次の通り。

▽電動機=7・5kW▽回転数=1000〜18000−pm
∇軸端=NT40▽ストックできる工具数=14本
 
 また、AZFシリーズは側面加工機が軸直列タイプの横架材加工ライン。無駄な動作を排除することで精度・能力の向上を実現する。平安コーポレーションは、高い生産性が求められる木造住宅の多様な加工ニーズに合せたライン構築を可能にし、住宅文化を支えるプレカット加工の最新技術を開発、提供している。
 
平安コーポレーション
丁EL O53−4411−3311

地域ビルダーからみる面材完全プレカット化への流れ

                                       ハセベ
 
 木造住宅でのプレカットの普及は、構造材の全自動プレカット化からはじまった。最近では床合板のプレカット化が一般化してきた。また屋根野地合板のプレカット化も進行しており、住宅建築での面材のプレカット化率が屋根もパネル化すれば、合理化も大いに進む(ハセベの屋根施工現場)益々高くなつている。そんな中で、様々な理由から難しいといわれていた垂直面のプレカット化を積極的に進め、新しい現場施工のスタイルと現場環境対策を目指そうというビルダーが登場している。小誌の前号で紹介した東京・西日暮里の潟nセベだ。同社は、自社のパネル工法であるプラスワン工法で木造3階建住宅を展開、地域に年間250棟を供給する企業だ。
 同社の面材プレカットへの取り組みは、まずパネル工法からスタート。さらに難しいといわれる屋根野地についてもパネル化を進めてきた。そのため自社でパネルCADを開発。躯体精度が悪いと3階建の上階ではパネルが入らなくなるため。同社ではいかに躯体精度を上げるかをテーマに改良を重ねてきた。そのメリットを享受したのが、垂直面での面材のプレカットだ。
 同社のサイディングのプレカット化は、現場採寸なしで工場でプレカットして現場で取り付けるというもの。現在取り組んでいるビルダーでも現場切削が必要であり中途半端なプレカットが多い。同社では構造材と同じように、図面だけを元にプレカットし現場で取付けられる。いわば完全プレカット化面材である。これによりサイディングの歩留まりを85%から92%へと7ポイントもアップ。また現場施工もサイディングの留め付け手間が従来の10人工から4人工で済むようになり、工期も4日間短縮するなど大幅な省力化を実現した。
 不可能といわれた壁面を完全プレカット化できたのは、単に構造躯体の精度が飛びぬけてアップしたからだけではない。現場に持ち込んだプレカットしたサイディングをそのまま取付けられるようにする現場施工の標準化やシステム化が必要だった。同社では現場対応で決められていた処理などを詳しく調査し、収まりや施工手順をルール化。外壁回りの開口部の位置、寸法が明確になるよう、設計段階からシステム化した。ポイントとなつたのは、サッシの取付け位置で、これまでは現場の大工の指示で調整されていた位置の確定を事前に図面に落としこめるように、位置確定方法をルール化した。
 また、工場でプレカット化できるようになったことは、現場の環境向上に大いに役立った。同社では歩留り向上や省力化よりも、むしろこちらのほうのメリットが大きいという。面材を現場切削する場合、広い作業スペースが必要であり、切削時の騒音、粉塵対策が問題だった。プレカット化するとそれらの問題が一挙に解決できる。同社は特に都市部の狭小地での工事が多く近隣が密集している。まわりに迷惑をかけないような工事環境が今後益々求められるようになっているのだ。面材プレカット化志向は、そうした現場の環境問題への対応である。
 同社では、今回のサイディングのプレカット化を今後全株で実施していく。また石膏ボード、フローリングなどの面材についてもプレカット化のほか、施工手間のかかる3階建の曲階段について完全プレカット化で、現在2人工かかっている工事を半分にする考えだ。サイディングのプレカット化では、既存のサイディング業者を使わないで済むよう、グループ内での施工を含めた内製化を進めている。今後はこうしたプレカット・配送・施工までのトータルなプレカットサイディングとして、積極的に地域の工務店・ビルダーなどの外注も受けていく計画だ。

ハセベ
TEL 03−3802−8722

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